その他の用語‎ > ‎年収とは‎ > ‎

フリーランス・個人事業主の年収


フリーランス・個人事業主の場合の年収は、収入なのか所得なのか判断が分かれるところだと思います。私は人から聞かれたりカード会社の審査で情報を入力する際などで迷った経験があるため、その情報をまとめていきます。

まずは年収に関する言葉としてよく挙げられる収入・所得・課税所得の3つの言葉について、確定申告書と課税明細(送付される「住民税の税額決定納税通知書」のこと。ただし、市区町村役所で取得できる課税証明書・納税証明書でも同じ)をベースに下の表で簡単に説明します。

項目 概要
収入 所得税の確定申告書Bの(ア)~(サ)の「収入金額等」の合計になります。これは単純に入ってくるお金の合計になります。
所得 所得税の確定申告書Bの(1)~(9)の「所得金額」の合計もしくは、課税明細上の「合計所得金額」になります。これは収入から必要経費を差し引いた額になります。
課税所得 所得税の確定申告書Bの(26)の「課税される所得金額」もしくは、課税明細上の課税標準額のことです。これは、所得から社会保険控除や基礎控除等の金額を差し引いた金額になります(ただし、所得税と住民税では、生命保険の控除金額や基礎控除の金額が異なるため、両者の課税所得は若干異なる金額になります)


年収とは、もともとの言葉の意味では「1年間の収入」のことを指します。つまり入ってくるお金すべてが年収ということです。

しかし例えば、売上が1000万円・仕入が600万円・経費が300万で、手元に残るお金が100万円だけになる低所得・貧困世帯でも年収は1000万円になります。しかしこれでは「サラリーマンの年収」と大きく食い違いすぎるし、本来知りたい事がわからない意味がない数字になっているといっても過言ではないでしょう。

なので、年収に収入を当てるのは適切ではないと思います。「サラリーマンの年収」と同等の意味を持つ数字にすべきだと思います。


考慮すべき点は、「仕入れと経費」と社会保険料控除についてです。フリーランス・自営業者は「トーゴーサンピン(10・5・3・1)」という言葉もあるように所得補足率が低いといわれ、生活費の一部を経費に算入していることもあることを考慮すると、経費の一部を売上げから差し引くのみのとどめる等の調整が必要かもしれません。また、サラリーマンが年金や健康保険等の社会保険料が労使折半であることを考慮すれば、社会保険料の半額を売上げから差し引くことが望ましいと思います。しかしそれも人により事情が異なるため、一律に定めることは難しいでしょう。


その辺の事をもろもろ考慮すると、「フリーランス・自営業者の年収」は、

「フリーランス・自営業者の年収」=所得=売上-(仕入+経費)

とするのが妥当だと思います。


カード会社の判断例

ちなみに楽天カードでは以下のように明記されており、「所得を年収とする」と言う意思表示をはっきりとしています。
  • (課税証明書の場合)年間所得額の記載があるものをご送付ください
  • 法令および関連規則等に基づき、確定申告書Bについては、「所得金額」を年収額の基準といたします



まとめ

フリーランス・自営業者の年収には、所得を使いましょう。


余談

実は私が利用しているカード会社の一つ(楽天ではない)から、年収額の提示と収入の証明書の提出を求められました。収入の証明書は、以下のいずれかを提出との事でした。
  • 確定申告書(収入・所得・課税所得の記載がある)
  • 支払調書(収入の記載のみ)
  • 課税証明書(所得・課税所得の記載がある)
  • 納税通知書(所得・課税所得の記載がある)

支払調書には収入額しか書いてありません。課税証明書には収入額は書いていません。支払調書を提出してそこに記載の無い所得を書くのもおかしいでしょうし、課税証明書を提出してそこに記載の無い収入を書くものおかしいでしょう。仮に、支払調書の場合は収入を、課税証明書の場合は所得を、という事だったとしても、確定申告書だったらどうするのか、などといろいろ疑問が湧いてしまいます。

年収額の記入欄に何を書けばいいのかとそのカード会社に問い合わせたのですが、オペレーターの子はこれらの言葉を理解していないようで、聞くたびに言う事が変わり有効な回答は得られませんでした(最後は「書類を見て判断するので、年収額は何を書いていてもいいです」と言われました…)


年収額を聞いておいて、年収とは何かが理解できていない企業も少なからずあります。「御社では収入と所得のどちらを年収としているのですか?」などと聞いても野暮ですから、(どうせわかっていないのだから)「所得額のことですよね」とだけ言って話をスムーズに済ませるようにした方がいいでしょう。

2013/08/21